【書き起こし】OneNDAの過去・現在・未来

2021年9月16日に、OneNDAプロジェクトローンチ1周年を記念して、OneNDAプロジェクト誕生の背景やOneNDAのこれまで・これからをテーマにしたウェビナーを開催しました。

本ページでは、そのウェビナーの内容を書き起こしております。
(書き起こしにあたり、内容を一部補完・改変しています。)

酒井 智也

弊社は、リーガルテックの領域で事業をしております。その中の1つが、契約業務の効率化に着目したプロダクトであるHubbleの提供です。これは、既存のツールとなじみがいい、「必要最低限の変化で最大の効果」をもたらすクラウド型の契約管理サービスです。

弊社ではもう1つ、OneNDAというサービスも提供しております。本日は、リリースから1年を記念して、改めてOneNDAのこれまでや今後の展望について、対談形式を一部交えてご説明させていただきます。

目次

◆OneNDAの概要紹介

OneNDAを一言でいうと

酒井 智也

OneNDAとは、一言でいうと、「NDAの統一規格化を目指すコンソーシアム型のプロジェクト」です。少しイメージしづらいかなと思いますので、より具体的な業務フローに即してご説明します。

酒井 智也

何か取引を開始する場面を想像してください。取引開始前に情報を開示するときはNDAを締結していると思います。語弊を恐れず言うと、我々はこの締結作業をなくしたいと考えております。そして新たに秘密情報に関する取り決めを定めるのが、OneNDAというプロジェクトです。

酒井 智也

すなわち、これまで取引開始前に締結されてきたNDAを一本化し、賛同するだけで、お互いがルールを把握し、迅速に取引が開始できるフェアでスピーディーな世界を目指しています。

なぜ、統一規格化を目指しているのか?(OneNDA誕生の背景)

酒井 智也

なぜOneNDAで統一規格化を目指しているのかについて、統一規格化の必要性と許容性に分けて説明します。

酒井 智也

まず必要性について、いわゆる慣習的に締結されてきたNDAに関しての非効率性や非生産性を解決したいという背景があります。すなわち、NDAは数も多いし、締結にどれほど意義があるのかわからないものがあると思います。そこで、秘密保持の取り決めをクリアにして、よりスピーディーにビジネスを開始できないかということです。

酒井 智也

次に、なぜ統一規格化できるかというと、そもそも契約書とは、証拠としての意義、行為規範としての意義があります。他方で、実務では慣習的意義の強い契約書も存在するのであり、本契約開始前や取引開始時のNDAについては、慣習的意義の強いものが多いと思います。これについてはよりスピーディーに、ライトに定めることができると考えております。

酒井 智也

ここで、ひな形を作って提供すればいいのではないかというご質問を頂きます。これについては、ひな形を提供することによっては上記の非効率性は解決しないと考えています。

それには、3つ理由があります。

酒井 智也

1点目に、OneNDAではコンソーシアムに参画して統一ポリシーに賛同するだけで統一ポリシーの内容が当事者間に適用されるため、個別の契約締結という作業が一切不要になりますが、ひな形の提供ではそうはいきません。

2点目に、ひな形は修正を予定されており、一つのルール策定というOneNDAの思想とは異なるものになってしまうことが挙げられます。

最後に、少し異なる観点からの説明ではありますが、一つのルールを策定して締結もいらないとなれば、営業部門の方にも一つのルールが浸透し、秘密情報の管理に対する意識が醸成されると思っています。

荒木 克仁

スピードという点について、大企業は自社ひな形を通常有しており、それが修正されることなく締結されるケースが多く、ドラフトやレビューにスピード・コストがあまりかかっていないような印象を持っているのですが、そのような企業にとってもOneNDAに参画するメリットはあるのでしょうか?

酒井 智也

たしかに、そういったご指摘も受けます。しかし、NDA締結業務を前提とする場合、契約書の中身をレビューする以外に、営業とのコミュニケーションや、締結した場合の取引先・有効期間・秘密情報の範囲の管理など、締結前後でも業務が発生します

そのうえ、NDAは数も多いため、管理コストという観点からも、ひな型提供とは違うメリットが大企業にもあると思います。実際、野村不動産などの大企業にもプロジェクトの開始直後からご参画頂いております。

「コンソーシアム」とは何か

酒井 智也

続いて、コンソーシアムの法的構成について説明致します。
このプロジェクトを開始するにあたって、外部弁護士や経産省雛形を作成した方と議論しました。その中で、3つの法的構成が考えられるということになりました。

1つ目が民法上の組合、2つ目が権能なき社団、3つ目が利用規約に基づくサービス提供者とそのユーザーという整理です。

酒井 智也

結論から言いますと、我々は3つ目の法的構成として構成しています。組合は出資要件や共同の事業者性という要件、権能なき社団には多数決原理という要件があります。これがあると、コンソーシアムとしての求心力や団結力があがる一方、参画のハードルもあがってしまうと考えられます。

酒井 智也

我々はこの取組みを通じて、新しいルールを社会に実装していきたいと考えており、なるべく参画のハードルを下げたいという思いがあります。したがって、我々は用規約に基づくサービス提供者とそのユーザーという法的構成で整理しています。

酒井 智也

また、なぜCC方式を採用しなかったのか、というご質問も多くいただきます。CC方式は1対Nの関係を想定していますが、NDAは1体1の関係であるという違いがあります。そのため、CC方式はあまりワークしないと考え、採用しませんでした。

荒木 克仁

秘密情報の開示の場面では、情報開示側が相手に厳しい管理を押し付けることがあり、これは内容の公平さ(フェアネス)に反するのでCC方式はあわないのでは、という点も過去にインタビューでお話していましたね。

なぜHubbleがこれを行うのか?

酒井 智也

なぜ、HubbleがOneNDAを行うのか?というのも良くいただくご質問です。

結論としては、HubbleもOneNDAも、自分たちが実現したい「契約業務の効率化」という単一の目的のために行っているからです。

酒井 智也

Hubbleは、最適な契約書管理・共有システムを提供するサービスです。他方で、契約業務のやり方は各社各様で、大量の契約書を捌くための多様な業務フローが存在します。そのときに、大量に発生する契約書を捌く汎用的なソリューションを提供するだけでなく、大量の契約書を減らすという別のアプローチがあるのではと考えました。

酒井 智也

Hubbleは流れてくる契約を締結後管理まで滑らかに持っていく仕組みを提供するというアプローチ、OneNDAはそもそもの流れてくる契約の本数を調整するという別のアプローチで、契約業務を正しく効率化するという一つの目的を達成しようとしている点に違いはありません。喩えるなら、川の水の流れ方を整えるのがHubbleで、水の量をコントロールするのがOneNDAというイメージです。

荒木 克仁

個人的にも、契約業務の最適化と契約量の調整は発想として異質なものではなく、法務担当者の皆様におかれましても馴染みのある発想に根ざしているものと考えています。

たとえば、定型的でよく結ぶような契約については、ひな形やチェックシートなどを用いることで、ドラフトやレビューの仕方を他の契約と変えて効率化していると思います。この「定型的な契約業務を効率化したい」という発想をOneNDAも持っていて、ただその手法が業務の効率化に留まらず業務フロー自体を変える(なくす)、というところまで行っているという印象です。

酒井 智也

ライトな契約と重たい契約とで運用は分かれるべきだし現実に分かれていて、ライトなものについてはより新しい運用としてOneNDAを利用してみては、ということですね。

◆OneNDAのこれまでの歩み

酒井 智也

次に、OneNDAのこれまでの歩みについて、簡単にご説明させていただきます。

ローンチ後1カ月を経たずして、ネスレ日本株式会社やウォンテッドリー株式会社、野村不動産株式会社にご参画いただき、2020年11月には日経の夕刊の一面に掲載していただきました。

酒井 智也

同年12月には、統一ポリシーの内容を分かりやすくまとめたスマート要約も公開しております。また、今年3月にもFAQを公開した他、ネスレ日本株式会社・ウォンテッドリー株式会社の法務担当者の方々と対談するウェビナーも行いました。

酒井 智也

2021年9月現在では、170社ほどご参画頂いておりますが、まだまだ規模を拡大していきたいと考えております。

(編集者注:こちらの記事をお読みの皆様も、是非ご参画のご検討をお願いします!)

◆今後の展望

近日リリース予定のもの

酒井 智也

我々はOneNDAをより利用しやすいサービスにしていこうと考えております。そこで、他の契約書との棲み分けのため、また営業部門の方々にもOneNDAをご理解いただけるようにするため、ガイドブックを鋭意作成中でございます。

酒井 智也

加えて、参画企業様になぜ参画したのか、参画に当たっての障壁をどうやって乗り越えたかについての導入事例についても作成する予定です。また、HP改善や、ロゴ使用も予定しています。自社がOneNDA参画していることを表明するロゴ使用のご要望も頂いておりますので、ロゴが完成した際にはぜひ各所でお使いいただけるとありがたいです。

OneNDAの将来

荒木 克仁

ここからは、OneNDAの「中の人」が質問するという形式ではありますが、皆様からよくいただく事項について、私が皆様の声を代弁するつもりで、質問していきたいと思います。

将来、参画が有料になることはありえますか?

荒木 克仁

まず、OneNDAはなぜ無料で参画できるのか、今後有料化することはあるのか、という点について、回答をお願いします。

酒井 智也

これはよく頂く質問ですね。新しい社会のルールを定めるとき、有料であればそこに参画するハードルがあがありますし、本来の目的からズレるという点でも違和感があるため、参画は無料であることが必然なのかなと考えており、少なくとも、参画して統一ポリシーを利用するという部分については、有料化するつもりはありません

荒木 克仁

OneNDAプロジェクトが掲げる「内容のフェアネスさ」という点でも、無料である方がなじむのかなと思います。日ごろNDAのひな形を押し付けられている中小企業・個人事業主の方が、フェアなNDAを求めてOneNDAに入会したくても、入会料という点で躊躇させてしまうという現象は、そういう方々にも参画してほしいというOneNDAの思想に反してしまうと言えそうだからです。

酒井 智也

たしかに、内容のフェアネスという観点からも説明できますね。

特定の業界・分野ごとに、内容にバリエーションを設ける予定はありますか?

荒木 克仁

次に、OneNDAの統一ポリシーの内容について、特定の業界・分野ごとにバリエーションを設けるといったようなことは予定していますでしょうか

当事者全員が特定の同じ業界に入っているというような場合には、業界ごとに用意した統一ポリシーが適用される、という仕組みがあった方が、きめ細やかなニーズに対応できて良いのでは、という考えもありそうですが、いかがでしょうか。

酒井 智也

結論として、今はバリエーションを設けることを考えておりません。まずは1つのルールを浸透させるためにベストなものをつくりたいと考えていますし、皆様もそれに乗っかってビジネスを迅速化できるか、トライしていただきたいなという思いがあります。

酒井 智也

また、もし仮に業界ごとの統一規格化のニーズあれば、既にルールになっているのではないかなとも思っています。我々としては、今は1つのNDAを浸透させることにリソースを集中していきたいなと考えています。

NDA以外の契約類型の統一規格化は?

荒木 克仁

ありがとうございます。最後に、NDA以外の契約類型についても、OneNDAのようなプロジェクトを実行することは考えているのでしょうか。

酒井 智也

結論として、OneNDAが軌道に乗れば、他の契約類型でもOneNDAのようなものを作ることを考えています。

今年の初めには、イギリスで同種のプロジェクトである「oneNDA」が立ち上がっており、こちらの方も、類似契約についても統一規格化を図ると宣言しています。

酒井 智也

個人的には、日本という国では、同じ文化・言語を共有し、ハイコンテクストな文脈で合意形成ができていると思っており、諸外国よりこのような取組みが上手くいく見込みがあると考えているので、同種プロジェクトの「oneNDA」には負けたくないなと考えています。

◆ウェビナー参加者からの質疑応答

Hubble社とOneNDA参画者との関係は、サービス提供者とユーザーとの関係であると整理されていますが、FAQでの「ユーザーが利用規約に同意したことをもってユーザー間でも利用規約が適用されることの合意が成立する」という部分(ユーザー間の法的関係)をもう少し敷衍してご説明いただけませんでしょうか。

酒井 智也

結論として、ユーザー間で明示ないし黙示の合意があるという説明になると考えています。OneNDAには参加規約がありますが、その2条1項・2項、さらには統一ポリシーの前段の記述から、統一ポリシーにしたがって秘密情報を管理するという明示または黙示の合意が参画当事者間に存在することになる、と考えています。

参画企業のリストの公開予定はありますか?

酒井 智也

どこかのタイミングでは公開するつもりですが、現状では公開しておりません。参画企業の一蘭を見たいというお声もいただいておりますが、メリット・デメリットを精査し検討しているところでございます。

OneNDAコンソーシアム参画企業でなくても、統一ポリシーをNDAのひな形として利用することはできるのでしょうか。

酒井 智也

HP上で統一ポリシーの内容を公開しており、一部修正が必要ですが、適宜修正の上NDAのひな形としてご使用いただいて差し支えございません。

酒井 智也

また、ひな形の形式に統一ポリシーを整えたものをWordファイル等の形で公開することは現状しておりませんが、近い将来行いたいと考えております。

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