ビジネススピードを上げつつ相互に理解し合いながらやり取りを行うのがOneNDAの目指す姿。

今回は、「OneNDA」プロジェクト(以下「OneNDA」)をローンチ後すぐにご参画いただいた野村不動産株式会社 法務コンプライアンス部 海外法務課(課長)の黒田健介様に、参画の理由や背景、契約業務のこれからについてお聞きしました!

目次

スピーディに秘密情報をやり取りできるようになると思った

——本日は宜しくお願い致します! まずは、どこでOneNDAをご存知になりましたか?

 Hubble(OneNDAの運営主体である株式会社Hubble(以下「Hubble社」)が提供するサービス)のトライアルをしているときに、メルマガでOneNDAについてのお知らせを受け取ったのがきっかけです。

 ——メルマガでOneNDA開始の通知を見て、最初はどのように思いましたか?

第一印象としては「取引当事者双方がルールを認識しつつ、より迅速に取引を開始できる状態をつくる」というコンセプトに共感できるところがあり、良いプロジェクトだなと感じました。その後、コンソーシアム参加規約の内容を確認したり、何度かHubble社とやりとりをして疑問点を解消し、自部署内でも協議のうえ、参加に至りました。

——具体的にどのような点について、良いプロジェクトだと思われたのでしょうか?

会社や事業によって異なるとは思いますが、私の場合、過去のある職場では一日一本以上NDAの相談が来るような状況があり、いかに業務を効率化するかということに日々悩んでいました。もちろん、NDAは秘密情報の取扱いに関する大事な契約ではあるのですが、レビューや相談では毎回似たような指摘をしている印象が否めませんでした。NDAの締結を効率化したいと思い、実際に組織としても個人としても工夫してきた経験があったので、OneNDAのコンセプトには非常に共感できるところがあり、OneNDAに参加すれば今までよりもビジネスのスピードを上げることができるのではないか、と考えました。

——NDAの締結までは、平均してどれくらいの時間がかかるものなのでしょうか?

契約内容にもよるのでケースバイケースだと思いますが、内容ついて修正・交渉が必要になる場合は、締結まで早くても1~2週間はかかるのではないでしょうか。

どういう社内フローにすれば事業部門に負荷がかからないか

——OneNDAに参画しようと決めたのは、どういったタイミング・理由でしょうか?

参加規約にあるとおり、参加したからといってOneNDA統一ポリシーの利用を強制されるわけではないので、参加したとしても特にデメリットはないのではないかと考えました。むしろ、このような新しい取り組みに参加することで何か有益な情報を得られるのではないか、そちらのメリットのほうが大きいのではないかと考えました。もっとも、実際にOneNDA統一ポリシーを適用しようとする場合の社内手続きや業務フローをどう整理していけば良いか、というのが今後の課題ではあります。

——OneNDAを適用する場合の業務フローの整理ができていないというお話でしたが、現時点ではどれくらい検討が進んでいますでしょうか?

現時点(2021年10月時点)では、参加企業の中で当社がNDAを締結する機会のある企業様はまだ多くないのではないかと思っています。より多くの企業が参加されれば、OneNDA統一ポリシーを利用する機会が出てくるのではないかと期待しています。
残念ながら今のところNDA締結の場面でOneNDAの名前が社内で上がったことはありませんので、今後実際にOneNDAを利用しようという話が出てきたタイミングで、社内手続きの運用について本格的に検討しようと考えています。「走りながら考える」ということで(苦笑)。
実際にOneNDAを利用するか自社書式(もしくは相手方書式)を利用するかを決める際には、できるだけ契約締結部署に負荷をかけない運用にしたいと考えています。

OneNDA?自社ひな形?

――実際にOneNDAと自社ひな形とで、どのような場面で使い分ける必要が生じるのでしょうか?

例えば当社から不動産に関する物件情報を開示する場合は、当社の事前同意なしに物件の利害関係者(所有者や管理業者等)に対して問い合わせ等をしないでください、という条項を定めるようにしています。そういうケースでは、OneNDA統一ポリシーをそのまま使うことは難しいと考えています。

——業界ゆえの特殊性、ということでしょうか。

そうですね。ただ業界としての特殊性は他の企業でもありえると思います。どういう場合にOneNDA統一ポリシーを使用できて、どういう場合では使用できないか、というケースバイケースでジャッジする必要があると思っていて、そのプロセスをどう構築するかは悩ましい課題だなと思っています。

大事なのは、法務部門・事業部門との関係性

——少しお話は戻りますが、OneNDAへの参画にあたり、上長への提案や稟議・決裁はスムーズにいったのでしょうか。また、どのように提案されましたか。

スムーズにいったほうだと思います。提案や稟議などでどこを強調するか・気にするかは、企業や人により異なると思いますが、私の場合は、参加は無料でデメリットが特にない(OneNDA統一ポリシーの利用を強制されるわけではない)、むしろ参加することで情報を得られるというメリットがある、という点を強調して提案しました。
提案・稟議のスムーズさに関していえば、上長との関係性や組織の雰囲気も関係してくると思います。私は当社に中途入社しており、新しいことを提案することを期待されていたので、当時の部長には比較的カジュアルに新しいことを提案しやすい環境でした。そういう意味では運が良かったとも思います。

——提案の内容というよりも、法務部の関係の良好性が影響したような感じでしょうか。

それもあると思います。一般的に法務部門は保守的な面もあるでしょうから、デメリットがないなら新しいことに挑戦しよう、という発想が受け入れられないケースもあるかもしれません。

——黒田様の方で、上長や他の法務部門のメンバーとの関係を良好に保とうとして、工夫されていることはありますか?

この点については日々試行錯誤の連続で、チームビルディングやコーチングに関する参考書を読んで「いいな」と思ったものを実践しては失敗して次に活かすということを繰り返している気がします。最近は「心理的安全性を高める」というキーワードを念頭に、比較的若い年次やまだ経験が浅いメンバー・中途入社のメンバーでも発言しやすい環境を作るように意識しています。新しくて面白いアイディアが気軽に飛び交っていて、マネジメント層がしっかりそれを傾聴して実現に向けて取り組んでいる、そういう組織でありたいです。
例えば、これは同僚の発案ですが、社内のビジネスチャットで雑談チャンネルを設けて、そこでは会社の話は一切NGという取り決めで雑談をしたり、定例会議の冒頭では必ず雑談をするようにしたりしています。他には、自分の失敗談も隠さず話したり、文字で伝えるのが難しいと感じることについては対面や電話で話したりすることも意識しています。OneNDAへの参加もそうですが、私自身が新しいことにチャレンジする姿も見せるようにしています。

——かなり風通しの良さそうな職場ですね。事業部門のメンバーとの関係に関してはいかがでしょうか?

その点に関しては、私のZoomの背景画面に表示している、法務コンプライアンス部の掲げるスローガンをご紹介したいです。これは、我々法務コンプライアンス部で大切にしている価値観・姿勢を表したもので、数年前に当時のメンバー全員で合宿をして作り、受け継いできているものです。

この中に「生み出す法務」、「共に歩む法務」というものがあります。これは「事業部門等の他部署が抱える課題を一緒に解決する姿勢で仕事をしよう」ということを意味していて、「法的リスクを伝えるだけの評論家でいるのはやめよう」とか、「コワモテ法務ではなくモテモテ法務になろう」といった姿勢を表しています。ビジネスを前に進めるためにどう貢献できるか、という目線で仕事をした方が断然おもしろいですし、そうでないと存在意義がないのではないか、社内からも頼りにされないのではないか、という思いが以前よりずっとありました。

コロナ禍の前は事業部門のフロアで一緒に仕事をしたり、コミュニケーションの際はできるだけ法律用語は使わず、ビジネスの言葉で話すようにするなど、法務へ相談する際のハードルを下げることを意識して取り組んでいました。そういった地道な積み重ねの結果か、私のチームが支援している海外事業部門のメンバーからは「法務らしくない」という、嬉しいのか嬉しくないのかよくわからない言葉をもらうこともあります(笑)。

これからの契約業務のあり方

——最後に、これからの契約業務の在り方についてご質問させてください。OneNDAの参画企業数が増えると、今後NDAの締結についてはどのようになっていくとお考えでしょうか。

参加企業数が増えて、OneNDAの知名度も上がってくれば、自社の契約締結部署において「この相手企業はOneNDAに参加しているし、OneNDA統一ポリシーの契約内容で問題がないから、個別のNDA締結は不要にしよう」という発想をもってもらえるのではないか、それによってビジネススピードを上げつつお互いが契約内容を理解しながら秘密情報のやり取りを行うという状態が生まれるのではないかと思っています。それがOneNDAコンソーシアムの目指す姿だと理解しています。

——黒田様のそのお考えは、どういった体験から生まれたものなのでしょうか。

会社によっては、契約の締結については基本的には必ず法務の承認を得なければならないという運用がなされている会社もあるかもしれません。その良し悪しは一概には言えませんが、もし契約締結部署のメンバーが「法務のお墨付きを得ておけばどんな内容の契約でも良くて、逆に法務のお墨付きが無ければ契約できない」という考えを持ってしまっているのであれば、それは「契約締結部署のメンバーが自分たちの仕事に関する契約であるにもかかわらず、その内容を理解しようとしない」ということでしょうから、非常に残念ですし危険だと考えています。私の過去のある職場での話ですが、そういった運用・風土を変えたくて、もちろんどんな相談でもウェルカムですよというオープンな姿勢を示すことは大前提としつつ、例えば稟議が必要になるような重要な契約については法務の承認を必須とし、それ以外の契約について法務の承認は不要とする、とった運用をした経験があります。

——契約締結のスピードという観点でいうと、同じく契約業務を効率化するリーガルテックについてはどのようにお考えでしょうか。

契約業務全体で見ると、そこに関連する情報システムがバラバラで、まだまだ連携できる余地がある、という印象があります。相談受付、契約書レビュー、社内決裁、電子契約締結、締結後管理といった各フェーズがシステム的にうまく連携されるようになると、業務上のミスも防げて業務がより効率化されるのでは、と考えています。法務部内だけでは完結できない部分も多いので、例えばスモールスタートで早い段階で目に見える成果が得られそうなものから始めて、他部署での共感を広げていく、といった工夫も必要と思っています。

——契約は法務で閉じるものではないですもんね。弊社としても、企業全体にとって使いやすいものになるようにサービスを改善していきたいと思います。本日はありがとうございました!

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