OneNDAは、よりビジネスの遂行や社員にフォーカスする方向へ、考え方を変えていくきっかけになる。

今回は、「OneNDA」プロジェクト(以下「OneNDA」)にご参画いただいたネスレ日本株式会社 法務部長 美馬耕平様に、参画の理由や背景、契約業務のこれからについてお聞きしました!

目次

OneNDA導入に関して不安点はなかった

——OneNDAを知るきっかけと、知った時にどのような印象をお持ちになりましたか?

 きっかけは、当時、弊社の法務部門でDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めており、様々なデジタル化への取り組みや業務効率化についての情報を得ようとしていました。
その中で、弊社がHubbleユーザーでもあったことから、Hubbleが発信しているメルマガ等のニュースで拝見して、知りました。
そして、OneNDAのアイディアそのものを知った瞬間にこれだと思い、参画したいと考え、統一ポリシーの内容を検討し、すぐに参画を決めました。弊社の本店所在地が神戸市のため、裁判管轄が東京であることは気になりましたが(笑)

 ——法務の立場でDXの取り組みをしてく中で貴社は具体的にどのような取り組みをしていましたか?

当初、私が個人的に新しい情報を取りに行く姿勢で法務部門のDXに取り組んでいましたが、最近になって全社的に多方面でDXを進める取組みを行なっております。
もともと、機械に任せられる部分については、機械に任せてしまった方が楽であり、正確であると思っていたので、自分自身の処理能力を過信せず、利用できるシステムがあればシステムに頼りたいというところがありました。
また、「ビジネスの成功を実現させる法務部を作りたい」と思っているので、法律の知識を蓄えるだけではなく、よりビジネスの方に寄り添い、理解していく姿勢をもちたいと考えています。そして、そのためにはビジネスのことを考える時間が必要です。他方で、法務部門はコスト部門だと一般に考えられているので、人を増やすのは難しい側面があります。そうであれば、システム導入を進めて、業務効率化を行い、考える時間を作る必要があると考えました。
法務部長の職についたときからデジタル化を進めることは当たり前のことに感じていて、ひとり突き進んでいました。

——OneNDAの仕組み(コンソーシアムに参画する企業同士に統一的なルールが適用される仕組み)に対してリーガル的な側面から不安やネガティブなところはありませんでしたか?

法務部内に話した際にも、経営層に話した際にも、不安点は出なかったですし、具体的に解消しなければいけないことや問題になるようなところはなかったです。また、リーガルテックベンダーであるHubbleが行なっているのだから問題がないという側面はありました。
強いていうなら、今までと違うことをすることに対する漠然とした不安感はなくはなかったです。また、仮に裁判になった場合に、裁判所がOneNDAによる合意の成立を認めたというケースがまだないので、その点は理論的にはリスクとして考えられるのかとは思いました。ただ、そのリスクはほとんどないと理解しているので特段問題だと感じたところはなかったです。

——顕在化したリスクのインパクトの大きさやビジネススピードを考慮した結果、OneNDA参画のメリットが大きいと判断されたということでしょうか?

弊社は非上場企業でありアクティビストの目が光っていませんし、例えば金融関係のように監督・官庁がいない企業ですので、ビジネスの進め方は比較的規制が厳しいものではありません。そのため、リスクとビジネススピードなどの利点を総合的に考慮した判断となりました。

OneNDAはNDAの最も効率的な方法

——NDAのレビューはAIによる効率化もありますが、OneNDAと比較して違いを感じられますか?

弊社では契約書のAIレビューを導入していますが、どちらが優れているという比較はしておりません。
AIレビューは、弊社の立場に立って自社を守るスタンスでレビューをしてくれます。ただ、ややこしい契約や重要度の高い契約の場合、人の目で確認する必要がありますが、AIが提案したものを確認する時間を含めてもレビュー時間が短縮され効率化されていると感じています。
OneNDAは重要なポイントが限定されており、コンソーシアムのように人間の関与をほぼゼロにしますので、NDAに関しては最も効率的な方法であると感じていますし、同時に、ヒューマンエラーを減らすという意味も含めて、理想的なものだと思います。

——コンソーシアムのようなスキームでNDA以外の契約類型もカバーしていくことは可能だと思いますか?

コンソーシアムをベースに合わせて、業界・業種による契約書の特別なところだけおさえる方法は可能だと思います。
このコンソーシアムに加盟していれば、何もする必要がないというところまで広がっていき、日本国内、ひいては全世界で、このコンソーシアムで基本的な部分9割を満たし、残りの特殊・特別な1割があれば、その点はお互いのルールでカスタマイズするようになっていくのではないでしょうか。
弊社は法務部門から社内へOneNDAに加盟していることを開示しているので、突き詰めると秘密保持の意識づけにもなります。

——美馬様の視点でこういうシステムやリーガルテックはどうかなどのアイディアはありますか?

法務部門が社内外において、ビジネスの遂行において関係を持たなければならない時に、プラットフォームになるアプリないしは専用ページにアクセスするだけで完結するものがあればいいと思います。
例えば、調達、相談、契約、支払い管理などが一つのプラットフォームでできるなど、自社に合ったものが揃っていると理想です。
弊社では現在、契約書のバージョン管理をHubbleで行った後のフローを繋いでいくなど、複数のLegal Techの間を繋いでいくアプリを開発しています。
OneNDAも人間の目で加盟しているかチェックしている状況ですので、アプリで自動的にできるようにしていきたいですね。

OneNDAとテクノロジーを利用してやるべきことに集中する

——貴社の法務部の魅力や掲げられているものを教えていただけますか?

私自身の中では、目的や規範など文字や形にしているものはあります。
法務部門の目的は、ビジネス、これはもちろん事業部門だけでなく間接部門も含みますが、その成功を実現すること、そして、そのことが様々な方のGood Lifeに繋がっていくことを意識しています。つまり、法務部門も、ネスレ日本の信条である“Good Food, Good Life”の実践のために活動しているという意識です。

——日々の業務や視点など、Purpose(目的)が日々の業務に落ちているところはどういうところでしょうか?

全てのレビューをする際、この部分はビジネスマターだから知らないではなく、時間の許す限り注目し、これでいいのかを議論したり、この言い回しでいいのかなどの問題提起や提案をします。
現実には、なかなか理想とするだけの時間がありませんが、だからこそ、そのための時間を作ることが重要であると考えています。

——ビジネスの初期段階でリーガルが介入する仕組みが社内でできていたということでしょうか?

現状は体制作りが難しく仕組み化できていません。ですが、有用なアドバイスすることにより法務部がいた方が良いという感覚を広めたいと思い、新規事業やサービスの検討が始まる際には、早い段階で介入したいという要望は出しております。
Eコマース(通販)部門は実際に体制としてできており、リーガルコントローラーとしてビジネスについてチェックが早急にできるよう同部門専任のスタッフを常駐しています。
ビジネスに関する相談や問題行動のチェック、早急なレビュー依頼などにも対応ができるよう、ビジネスの初期段階から深く関わる体制作りを目指しております。

——法務部門の効率で人の手をかけず、やるべきことに集中するためにテクノロジーやOneNDAを利用していく意識が美馬様にあるのだと感じました。

AIが流行り出した時に弁護士や法務部門は仕事がなくなると言われていましたが、OneNDAの取り組みが始まる前までは、秘密保持契約が「作業」だと思われていませんでした。
相手がOneNDAに加盟しているのか確認をする、もしくは自動化できれば相手の社名を入れればAIが確認してくれるということは、秘密保持契約はもはや「作業」ということになると思いますが、今後テクノロジーが進んでいけばそのようなことが増えると思います。
効率化によって生まれた時間を、ビジネスの成功にフォーカスし、そのための考える時間に充てる、もしくは家族と過ごすとか趣味とか、自分自身のための時間に充ててもいいのではないでしょうか。
ちなみにOneNDAを広めるための取り組みとして弊社では、自社の秘密保持契約書の1枚目ヘッダーにOneNDAに加盟していることとURLを載せて相手に送っています。
そうすることで、相手方がOneNDAに加盟していた場合、NDAをレビューしたり押印したりする前に気付いてもらうことができ、加盟している者の間で不要な契約締結の手間をとってしまわないようにできるのではないかと考えています。

——法務部門の中には、「NDAには契約書レビューの基本の”き”がNDAのチェックである」、「自分たちでしっかりレビューできるようになって法務パーソンとして独り立ちできるのだ」という見方もあるかと考えることもできそうですが、この辺りはどのようにお考えでしょうか?

様々考え方は分かれる点だと思います。私自身、法務部門の伝統を気にせず効率化を推進したいという考えがありますが、自分の考えだけが正しいと思っていません。
NDAが基本の”き”であるとして教えられるような、おそらくは多数の法務部員を擁する伝統ある大企業であると思いますが、そのような人材や時間などのリソースに余裕のある法務部門は信用できますし、憧れや尊敬の念を持っています。が、そうではない立場からすると、どうしても合理性の追求を考えてしまい、OneNDAの取組みは非常に合理的であると考えてしまいます。

——組織規模にもよりますが、OneNDAのような取り組みや参画企業が増えて業界的にスタンダードになっていけば、大企業にも徐々に広まるのではないかと考えています。

例えば電子契約ではまさにその流れが起こっているのではないでしょうか。コロナウィルスの拡大により企業規模に関わらず出社するのが難しい状況が続いています。
極端ではありますが、取引を始めるにあたり、大企業だから取引をしようというのではなく、あの企業と取引する場合は紙の作業が発生して社員が毎日出社しなければならないので取引はできない、ということもあるかもしれません。
OneNDAのような取組みは、伝統的なやり方を変えていないから優れているという考えから、効率的にDXを進めているのか、社員が出社しなくてもいい状況になっているのかなど、よりビジネスの遂行や社員にフォーカスする方向へ、考え方を変えていくきっかけになると思っています。

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美馬様にもご登場いただいたOneNDAウェビナーの書き起こしを公開中です!ぜひご覧ください。

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